大阪地方裁判所 昭和61年(ワ)11286号 判決 1992年4月28日
神戸市中央区多聞通二丁目四番四号
原告(反訴被告)
ブックローン出版株式会社
右代表者代表取締役
工藤俊彰
右訴訟代理人弁護士
清木尚芳
右同
射手矢好雄
右同
松本岳
大阪府東大阪市稲田新町二丁目三一番二六号
被告(反訴原告)
カシヤマ化工こと 柏木城二
右訴訟代理人弁護士
小松正次郎
右同
小松陽一郎
主文
一 被告(反訴原告)は、別紙一「イ~ニ号物件目録」記載の各物件及び別紙二「ホ号物件目録」記載の物件のうち角筒面が一致したところで停止する物件(三個の突起4が各一対のリブ10の間に位置したときに相互の五角筒柱1の回転阻止のために働く力において、三個の突起4の外周方向への突出し高さ〔突起4の外周方向への幅と円筒形凸部3の突起4が配設されていない部分の外周方向への幅との差で、単位はミリメートル〕の組合わせが上端面の角a、c、dに対応する位置の順に、〇・二〇、〇・四〇、〇・三五のものと同一かそれ以上のものをいう。)を製造、販売してはならない。
二 被告(反訴原告)は、前項記載の各物件、その半製品(前項記載の各物件の形状を具備しているが、未だ製品として完成に至らないもの)及び右各物件の製造に必要な金型、シールを廃棄せよ。
三 被告(反訴原告)は、原告(反訴被告)に対し、金四〇三万九五四八円及び内金二〇三万九五四八円に対する昭和六一年三月二六日から、内金二〇〇万円に対する平成四年四月二八日から各完済まで年五分の割合による金員を支払え。
四 原告(反訴被告)のその余の請求を棄却する。
五 被告(反訴原告)の請求を棄却する。
六 訴訟費用は、本訴反訴を通じ、これを一〇分し、その九を被告(反訴原告)の負担、その余を原告(反訴被告)の負担とする。
七 この判決は、第一ないし第三項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求の趣旨
一 本訴
1 被告(反訴原告)は、別紙一「イ~ニ号物件目録」、別紙二「ホ号物件目録」及び別紙三「へ号物件目録」記載の各物件を製造、販売してはならない。
2 被告(反訴原告)は、前項記載の各物件、その半製品(前項記載の各物件の形状を具備しているが、未だ製品として完成に至らないもの)及び右各物件の製造に必要な金型、シールを廃棄せよ。
3 被告(反訴原告)は、原告(反訴被告)に対し、金五〇〇万円及びこれに対する昭和六一年三月二六日(本訴状送達日の翌日)から完済まで年五分の割合による金員(民法所定の遅延損害金)を支払え。
二 反訴
原告(反訴被告)は、被告(反訴原告)に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する昭和六一年一二月九日(反訴状送達日の翌日)から完済まで年五分の割合による金員(民法所定の遅延損害金)を支払え。
第二 事案の概要
一 原告(反訴被告)の権利及びその実施
1 原告(反訴被告。以下、単に「原告」という。)は、左記(一)の実用新案権(以下「本件実用新案権」といい、その実用新案登録請求の範囲第1項記載の考案を「本件考案」という。)及び同(二)の実用新案権(以下、その実用新案登録請求の範囲第1項記載の考案を「別考案」という。)を有している(争いがない)。
(一) 考案の名称 5角筒柱連結知育玩具
出願日 昭和五六年五月二〇日(実願昭五六-七二七七九)
出願公開日 昭和五七年一一月二五日(実開昭五七-一八五三九六)
出願公告日 昭和六〇年一〇月九日(実公昭六〇-三三九九九)
登録日 昭和六一年六月一一日
登録番号 第一六四〇三五三号
実用新案登録請求の範囲
「(1) 角筒面に文字、数字、絵模様等を表示した5角筒柱を、その端面に設けた可回転にして角筒面が一致したところで停止するスナップ機構で互いに結合するように構成した5角筒柱連結知育玩具。
(2) 上記のスナップ結合機構は、凹側における角筒面の各々に対する位置に弾性片を有していて、この弾性片には、凹部あるいは凸部があり、端面の凸側においては角筒面の各々に対する位置に、端面の凹側の弾性片の凹部あるいは凸部に係合する凸部あるいは凹部が設けられている実用新案登録請求の範囲第1項記載の5角筒柱連結知育玩具。」
(別添実用新案公報(一)〔以下「甲一公報」という。〕参照)
(二) 考案の名称 5角筒柱によるかな文字知育玩具
出願日 昭和五六年五月二〇日(実願昭五六-七二七八〇)
出願公開日 昭和五七年一一月二五日(実開昭五七-一八五三九七)
出願公告日 昭和六〇年一〇月九日(実公昭六〇-三四〇〇〇)
登録日 昭和六一年六月一一日
登録番号 第一六四〇三五四号
実用新案登録請求の範囲
「(1) かな文字50音の各行を各別に角筒面に表現した各5角筒柱を、その端面に設けた、可回転にして互いの角筒面が一致したところで停止するスナップ機構で着脱自在に連結できるように構成した5角筒柱によるかな文字知育玩具。
(2) 各5角筒柱の角筒面に表現された50音のかな文字は、各行が互いに異色であって、各段は互いに異形であるバックの中に表現されている実用新案登録請求の範囲第1項記載の5角筒柱によるかな文字知育玩具。」
2 原告は、本件考案及び別考案の実施品たる5角筒柱の連結による知育玩具を製造し(争いがない)、右実施品(ブロック)五四個と本九冊(遊び方を示す絵本八冊及びお母さんのガイドブック一冊)等をセットにしたものを「もじはかせ ぺんたくん」との商品名で(以下、右セットを単に「ぺんたくん」という。)、昭和五八年五月一日からブックローン株式会社を通じて訪問販売により販売している(甲一、二、二五、検甲七、証人薬師院実美〔以下「証人薬師院」という。〕)。
3 原告は、昭和五八年五月二一日から昭和五九年九月一〇日までの間、テレビスポットコマーシャル、テレビ番組提供コマーシャル等で全国的に「ぺんたくん」の宣伝をし(甲二四、証人薬師院)、右販売開始から昭和六一年二月末日までの間に「ぺんたくん」を一〇万七三二六セット(後記被告の行為開始直後である昭和五九年一二月末日までの間に八万六六六三セット)販売した(甲二五)。
二 本件考案の構成要件及び作用効果(甲一)
1 構成要件
A 角筒面に文字、数字、絵模様等を表示した5角筒柱を、
B その端面に設けた可回転にして角筒面が一致したところで停止するスナップ機構で互いに結合するように構成した、
C 5角筒柱連結知育玩具。
2 本件考案の作用効果
(一) 本考案の5角筒柱連結知育玩具は、各5角筒柱を適当に結合し、分離し、あるいは結合状態で回転して角筒面が互いに一致したところで確実に停止することができるように構成されているから、幼児が使用において、ばらばらの状態にある従来の積木の知育玩具に比して結合と回転という別個の動作を必要とするため、遊びのうちに興味をもって文字、数字、絵模様等を習得することができる(甲一公報4欄24~32行)。
(二) 特に本考案は、5角筒柱であることにより、角筒面に、例えば五〇音の「あ」行、「か」行等の各行の文字を表現することができ、一個で一行の五音、一〇個で清音四五音、一六個で濁音、半濁音、撥音を加えた七一音、一八個でさらに促音、拗音を加えた七五音のひらがなの総てを表現することができるから、幼児は興味をもって仮名文字を習得することができる(同4欄33~40行)。
(三) また後片付け等の場合には結合して一本の柱状とすることができるから、ばらばらになって紛失する等のおそれがなく、知育玩具としては機能的で価値の高いものである(同4欄41~44行)。
三 被告(反訴原告)の行為
被告(反訴原告。以下、単に「被告」という。)は、業として、別紙一「イ~ニ号物件目録」(以下、単に「イ~ニ号物件目録」という。)記載の各物件(以下、順次「イ号物件」、「ロ号物件」、・・・といい、一括して「イ~ニ号物件」という。イ~ニ号物件は、角筒面貼付のシールが相違するだけで、構造は同一である。)のうち、昭和五九年一一月ころからイ号物件を、同年一二月ころからロ号物件及びハ号物件を、昭和六〇年三月ころからニ号物件を、同年五月ころから、別紙二「ホ号物件目録」(以下、単に「ホ号物件目録」という。)記載の物件(以下「ホ号物件」という。但し、シールの特定の関係、ホ号物件のうちには角筒面が一致したところで停止するもの〔以下「ホ号物件(一)」という。〕と停止しないもの〔以下「ホ号物件(二)」という。〕とがあること、被告によるホ号物件(一)から同(二)への製品切替及びその時期については後記判示参照。)を製造し、いずれも一六個、二四個、三二個入り等のセットとして、イ~ニ号物件については「もじあそび ベビコンブロック」、「ベビコン もじあそび」との商品名(以下「ベビコンブロック」という。)で、ホ号物件については「新型ニューベビコン」との商品名(以下「ニューベビコン」という。)も併用して玩具問屋へ販売し、昭和六一年二月当時、別紙三「ヘ号物件目録」(以下、単に「ヘ号物件目録」という。)記載の物件(以下「ヘ号物件」という。)の製造販売を企画中であったが、同月一五日に後記仮処分決定の執行を受け、右各物件の製造販売及びその企画を中止した(甲一三、検甲一~六、検乙一~五、七の1~3、被告本人、弁論の全趣旨)。
なお、以下、イ~ニ号物件及びホ号物件について述べる場合は「五角筒柱」と表記し、その余の場合は「5角筒柱」と表記する。
四 本件考案とイ~ニ号物件及びホ号物件との対比
イ~ニ号物件及びホ号物件は、いずれも本件考案の構成要件A「角筒面に文字、数字、絵模様等を表示した5角筒柱」及び同C「5角筒柱連結知育玩具」を充足する(争いがない)。
五 原告の対応
1 原告は、被告に対し、昭和六〇年一月二七日到達の書面(同月二六日付警告書並びに別送の本件考案及び別考案等の公開実用新案公報)により、被告のベビコンブロックの製造販売が不正競争防止法一条一項一号に該当することを理由にその製造販売中止等を請求するとともに、ベビコンブロックの製造販売が本件考案及び別考案等の出願公開後になされたものであることを理由に実用新案法一三条の三第一項の補償金請求権行使の通知(以下「本件警告<1>」という。)をした(甲五、六、二九の1~3、乙一八、弁論の全趣旨)。
2 原告は、昭和六〇年一月二六日ころ、被告の取引先である株式会社龍屋及び株式会社小松トーイに対し、書面により、右と同趣旨の請求及び通知(以下「本件警告<2>」という。)をした(乙三七、三八、弁論の全趣旨)。
3 原告及びブックローン株式会社は、昭和六〇年二月九日、被告及び株式会社龍屋を被申請人として、不正競争防止法に基づき、ベビコンブロックの製造販売禁止の仮処分申請(当庁昭和六〇年(∃)第四七六号、以下「当初仮処分申請」という。)をした(甲一三)が、昭和六一年二月一〇日右申請を取下げた(乙二七)。
4 原告は、昭和六〇年一二月二八日、被告を被申請人として、本件考案及び別考案の出願公告による仮保護の権利に基づき、ベビコンブロックの製造販売禁止の仮処分申請(当庁昭和六〇年(∃)第五七七〇号、以下「本件仮処分申請」という。)をし(甲一四)、後にニューベビコンを本件仮処分申請の対象物件に追加した(甲一五、弁論の全趣旨)。
本件仮処分申請対象物件は、別紙目録一ないし五記載のとおりであり、同目録一ないし四記載の物件が本訴のイ~ニ号物件、同目録五記載の物件が本訴のホ号物件(一)に該当する(イ~ニ号物件目録、ホ号物件目録、甲一四~一六、検甲一~五、検乙一、二、弁論の全趣旨)。
5 昭和六一年二月一〇日、本件仮処分申請(製造販売禁止・執行官保管)認容の決定がなされ(甲一四~一六)、同月一五日、当庁執行官は、原告の執行申立に基づき、右決定(執行官保管)の執行を行った(以下「本件仮処分執行」という。甲一七、一八)。
六 被告の出願及び権利
1(一) 被告は、左記の意匠権(以下「被告意匠権」といい、これに係る意匠を「被告意匠」という。)を有する(乙四三の1~3)。
(1) 出願日 昭和五九年一一月一二日(意願昭五九-四六七二二)
(2) 登録日 昭和六三年七月一三日
(3) 登録番号 第七四七一五〇号
(4) 意匠に係る物品 組み立て遊戯用ブロック
(二) 被告意匠につき、類似意匠1及び2が登録されている(乙一四、一五の1~7)。
2 被告は、左記の考案(以下「被告考案」という。)につき実用新案登録出願中である(乙一三、三六、被告本人)。
(1) 考案の名称 組み木の構造
(2) 出願日 昭和五九年一一月二六日(実願昭五九-一七九六二九)
(3) 出願公開日 昭和六一年六月一七日(実開昭六一-九四〇九六)
(4) 実用新案登録請求の範囲 別添公開実用新案公報(一)(以下「乙三六公報」という。)該当欄記載のとおり
3(一) 南澤巳代治(以下「南澤」という。)は、左記の実用新案権(以下、その考案を「南澤考案」という。)を有する(乙三二、三九)。
(1) 考案の名称 角筒柱連結知育玩具
(2) 出願日 昭和五五年一一月一五日(実願昭五五-一六四〇七七)
(3) 出願公開日 昭和五七年五月二九日(実開昭五七-八七七九六)
(4) 出願公告日 昭和六一年六月二四日(実公昭六一-二一一一七)
(5) 登録日 昭和六二年一月一九日
(6) 登録番号 第一六六五一七七号
(7) 実用新案登録請求の範囲 別添実用新案公報(二)(以下「乙三二公報」という。)該当欄記載のとおり
(二) 被告は、昭和六〇年四月一四日、南澤との間に、出願中の南澤考案につき、その専用使用及び権利発生後の専用実施権設定に関する契約((1) 期間 契約日より権利存続中、(2) 内容 全範囲、(3) 地域 国内、国外)を締結した(乙四、五、九、一〇、三二、三九、四四)。
七 各請求の概要
1 本訴
イ~ニ号物件、ホ号物件及びヘ号物件が本件考案の技術的範囲に属することを理由に、被告に対し、右各物件の製造販売停止・右各物件の廃棄等と、主位的に左記(一)の、予備的に同(二)の補償金及び損害金の合計五〇〇万円の支払を請求。
(一)(1) 被告が本件考案出願公開の事実を知りながら、昭和五九年一一月二一日から昭和六〇年一〇月八日(本件考案の出願公告日の前日)までの間、業としてイ~ニ号物件及びホ号物件を製造販売したことによる実施料相当の補償金五六万一六五七円(その間の販売総額一八七二万一九〇八円×実施料率三パーセント=五六万一六五七円)
(2) 被告が昭和六〇年一〇月九日(本件考案の出願公告日)から昭和六一年二月一五日(本件仮処分執行がなされた日)までの間、業としてホ号物件を製造販売したことにより原告が被った損害一二五万八三九二円(その間のホ号物件の販売総額四一九万四六四〇円×利益率三〇パーセント=被告が得た利益一二五万八三九二円)
(3) 原告が本件仮処分申請及び本訴のために要した弁護士費用相当損害金四〇〇万円の内金三一七万九九五一円
(二)(1) 被告が昭和六〇年一月二八日(本件警告<1>がなされた日の翌日)から昭和六〇年一〇月八日(本件考案の出願公告日の前日)までの間、イ~ニ号物件及びホ号物件を製造販売したことによる実施料相当の補償金一九万〇三八七円(その間の販売総額六三四万六二四八円×実施料率三パーセント=一九万〇三八七円)
(2) 右(一)(2)の損害金一二五万八三九二円
(3) 右(一)(3)の損害金四〇〇万円の内金三五五万一二二一円
2 反訴
原告の本件警告<2>及びその余の被告の販売先に対する同趣旨の警告、並びに本件仮処分執行が被告の営業に対する違法な妨害行為に当たる(右行為により被告は販売先の信用を失い、イ~ニ号物件、ホ号物件及びヘ号物件の製造販売を中止せざるを得なくなった)ことを理由に、原告に対し、右行為により被告が被った左記(一)ないし(三)の損害金合計二億二三五〇万円のうち、同(一)の内金一〇〇〇万円の支払を請求。
(一) 昭和六〇年二月一日から平成三年九月三〇日までの間の被告の営業上の得べかりし利益二億一六〇〇万円(一ヵ月当たりの被告の純利益二七〇万円×八〇ヵ月)
(二) 昭和六〇年一月から昭和六一年六月までの間の被告が販売先から返品を受けたことによる損害二五〇万円
(三) 被告の受けた精神的苦痛に対する慰謝料五〇〇万円
八 争点
1 本訴関係
(一) ホ号物件に、イ~ニ号物件目録添付の展開図面(以下、単に「展開図面」という。)一のシールが貼付されていたか否か。
(二) 本件考案には登録無効事由があり、原告の本訴請求は権利濫用といえるか否か。
(三) イ~ニ号物件、ホ号物件及びヘ号物件は、本件考案の技術的範囲に属するか否か。
(1) イ~ニ号物件は、本件考案の構成要件Bを充足するか。
(2) ホ号物件は、本件考案の構成要件Bを充足するか。
(3) ホ号物件は、南澤考案の実施品であって、本件考案の技術的範囲に属さないということができるか。
(4) ヘ号物件は、本件考案の構成要件A、B、Cを充足するか。
(5) イ~ニ号物件及びホ号物件(一)は、被告意匠権の実施品であって、本件考案の技術的範囲に属さないということができるか。
(四) (二)項が否定され、(三)項が肯定された場合に、被告が支払うべき補償金及び損害金。
2 反訴関係
(一) 本件警告<2>等及び本件仮処分執行が違法な営業妨害行為に当たるか否か。
(二) 前項が肯定された場合、被告に生じた損害の額。
第三 争点に対する判断
一 本訴関係
1 争点(一)(ホ号物件のシールの特定)について
ホ号物件の角筒面貼付のシールが、展開図面二ないし四の算用数字、絵模様、記号、かな文字等を印刷したシールであることについては争いがない。展開図面一のひらかな文字等を印刷したシールがホ号物件の角筒面に貼付されていたことを認めるに足りる証拠はない。ちなみに、原告自身本件仮処分申請の対象物件としてホ号物件(一)を追加した時は、ホ号物件(一)には展開図面二ないし四のシールが貼付されていると主張していたにすぎない(甲一五)。しかしながら、ホ号物件はイ~ニ号物件の金型を設計変更して製造されたもので(被告本人、弁論の全趣旨)、しかもイ~ニ号物件と同じ五角筒柱のものであるため、イ~ニ号物件用のシールをそのまま使用することが可能であり、ロ号物件、ハ号物件及びニ号物件用のシールがホ号物件に貼付されていたことに鑑みると、ホ号物件の製造販売当時、被告がホ号物件の角筒面に展開図面一のシールを貼付したものを製造販売するおそれがあったものと認められる。
2 争点(二)(本件考案の登録無効事由の有無)について
(一) 被告の主張
(1) 本件考案の出願日以前に、本件考案の考案者である薬師院実美(証人薬師院)は本件考案の実施品である試作品を守秘義務を持たない不特定多数人に対して提供し、市場モニター調査を実施したから、本件考案は出願前に公然知られ、公然実施された考案であり新規性を欠きその登録は無効である。
(2) 本件考案の先願考案である南澤考案は、その登録出願願書に添付された明細書(以下「南澤原明細書」という。)に、考案の名称として「クルクル回るブロック・積木」、実用新案登録請求の範囲として「(イ) ブロックの表面の中央を凹、又は凸に形成している。(ロ) 凹部面3に輪溝7と横溝8を施し、凸部面4に突起部5を設けてある。クルクル回るブロック、積木。」と記載されており、これがそのまま出願公開されたが、その後南澤原明細書の記載が補正されて出願公告され、設定登録に至った。右出願公告時の考案の名称は「角筒柱連結知育玩具」、実用新案登録請求の範囲は「角筒表面2に文字、数字、絵柄等を表示したブロック1の一つの面に円筒形の凸部5を設けその反対面に凹部6を設け、凸部5の円周面の複数個所に突起7を設け、凹部6の内周面に輪溝9と、凹部6の端面から輪溝9に達する縦溝8を突起7に対応する位置に、縦溝8と輪溝9とが連結するように設け、凹部6には他のブロック1の凸部5を嵌合して相互のブロックが凸部5を軸として回転可能にしてなる角筒柱連結知育玩具。」であり(乙三二公報)、その作用効果として「各ブロック1による連結がスムースに、且、確実におこなわれて互のブロック1の表面が一致したときは、その連結は離れることなく絵柄の形成、絵柄と文字、又は数字等によって、その問題に合わせるよう形成させることができる。」と明記されている(同2欄26~3欄2行)。これは、本件考案の構成要件Bの「その端面に設けた可回転にして角筒面が一致したところで停止するスナップ機構で互いに結合するように構成した」ものと同一性を有するものであり、その作用効果において「角筒面が互いに一致したところで確実に停止することができるように構成されている」(甲一公報4欄26~28行)ものと同一性を有するものである。また、南澤考案の出願公開公報(別添公開実用新案公報(二)〔以下「乙四公報」という。〕)には、「第11図は、本案の突起部を玉形にして下部にバネを設けた組み合わせ断面拡大図」、「5は、突起部」及び「10は、バネ」との記載、南澤原明細書(乙五)には「第11図は、凸部面(4)に設けた突起部(5)を玉形にして下部にバネ(10)を設けて凹部面(3)にはめ込んだとき、バネ(10)の弾性により突起部(5)は、自動的に上下して輪溝(7)に嵌る仕組状態断面拡大図」(同書2枚目)、「ブロック両表面を凹凸にして2連以上連結も可能であり突起部(5)を玉形、その他の物にして下部にバネ(10)等弾力性のあるものを施してもよい。」(同書4枚目)との記載があり、バネによるブロックの結合分離機構が開示されているが、これは本件考案の「スナップ機構」に該当するものである。このように、本件考案は、先願考案である南澤考案の「角筒柱連結知育玩具」を単に5角に限定して「5角筒柱連結知育玩具」としただけのもので、南澤考案とはその構成及び作用効果において同一性を有するものであるところ、南澤考案は、その出願日である昭和五五年一一月一五日の直後、既に公知公用のものとなっていたから、本件考案は新規性及び進歩性を欠き無効であり、そうでなくとも南澤考案の実施品により当業者が極めて容易に考案できたものであるから、進歩性を欠き無効である。
(3) 本件考案は、右のような登録無効事由を包蔵しているものであるから、本訴請求はいわゆる権利濫用に該当し許されない。
(二) 当裁判所の判断
(1) 本件考案が出願前に公然知られ、公然実施された考案であることを認めるに足りる証拠はない。なお、被告主張のモニター調査の対象物は、凹凸部のみがプラスチック製でその余は木製の5角筒柱であるが、文字、数字、絵模様等の表示がなく、しかもU字形の突出部(U字形のバネ)、すなわち甲一公報第2~第6図記載の本件考案の実施例に見られる突出壁16'、弾性片19'、突起20'、12の存しない、「角筒面が一致したところで停止する」構造を有しないものであり、本件考案の構成要件A及びBを充足しないものであった(甲一、二八、検甲七、八の1~5、証人薬師院)。また、そもそも右調査は、本件考案の考案者薬師院が5角筒柱の角筒面の大きさ(面積)について幼児が最も使いやすい大きさを探知することを目的として、幼児を持つ原告又はその親会社のブックローン株式会社の数名の社員に個人的に依頼して行ったものにすぎず、一般ユーザーを対象としたいわゆる市場モニター調査ではなかった(甲二八、証人薬師院)。
(2) 南澤考案の出願から登録に至る経緯は、被告主張のとおりである(乙四、五、三二、三九、四四、弁論の全趣旨)が、同考案がその出願日直後に公知公用のものになっていたことを認めるに足りる証拠はない。従って、この点において、既に前記(一)(2)の被告主張は採用できない。なお、念のため本件考案と南澤考案とを対比しても、被告主張を採用できないことは以下に述べるとおりである。
両考案は、角筒面に文字、数字、絵模様(絵柄)等を表示した角筒柱(ブロック)をその端面おいて嵌合し連結して回転できるようにした知育玩具である点においては同じである(甲一、乙四、三二)。しかしながら、本件考案は、「角筒面が一致したところで停止するスナップ機構」をもって5角筒柱を互いに結合分離する構成のものであり(本件考案の構成要件B)、角筒面が一致したところで積極的に角筒柱を停止させる作用効果を奏するものである(本件考案の作用効果(一)、(二))のに対し、南澤考案は、輪溝に突起をはめ込んで差し込むことにより結合し、突起が輪溝の位置に至って輪溝内を回動するという構成を有するにすぎず、すなわち輪溝に突起をはめ込む位置が縦溝に限定され、しかも、輪溝内には突起を停止させる部材は設けられていないから、輪溝及び突起は角筒面が一致したところで角筒柱を停止させる作用効果を奏するものではない(乙三二公報1欄2~10行、2欄11行~3欄6行、2頁第1図~第3図、3頁第5図~第7図)。それ故、南澤考案と本件考案とではその構成及び作用効果が同一ではない。被告主張の「各ブロック1による連結がスムースに、且、確実におこなわれて互のブロック1の表面が一致したときは、その連結は離れることなく絵柄の形成、絵柄と文字、又は数字等によって、その問題に合わせるよう形成させることができる。」との記載(乙三二公報2欄26行~3欄2行)は、その前後の「第1図、第2図で示す如く、あるブロック1の凸部5円周面の突起7が、他のブロック1の凹部6内周面に突起7と対応して設けてある縦溝8にはめ込んで差し込み突起7は輪溝9に達してその輪溝9内を回動するのである。しかも、縦溝8の設けてある位置は、突起7の位置よりずらして設けている。即ち、突起7は、ブロック1表面3の角端面線の中央の位置に当るあたりの円周面上下に設け、縦溝8は、凹部6内周とブロック1端面の対角線との2交点の内周面の位置に設けてある。これと同じく、各角筒柱についても、第5図から第7図の如く、突起7、縦溝8を、その数を増すならばこのような位置にすることが考えられる。」(同2欄11~25行、2頁第1図、第2図、3頁第5図~第7図)及び「又、連結されている一方のブロック1の端面の一辺が、他方のブロック1の端面二辺からなる交点の角と直交したときは互いのブロック1を軽く引くと分離するようになっている。」(同3欄2~6行)との記載を合わせ読むと、連結した複数のブロックの表面(角筒面)が互いに一致したときは、その連結が分離されないことを意味するにすぎず、ブロックの表面(角筒面)が一致したところでブロック(角筒柱)を積極的に停止させることを意味するものでないことは明らかである。また、被告主張の乙四公報及び南澤原明細書記載のバネ付き玉形は、突起に代るものであって、輪溝に嵌合案内されて輪溝内を回転するものであるが、角筒面が一致したところで積極的にブロックを停止させる機能を有するものではない(乙四、五、四四)。
(3) 以上のとおりであるから、本件考案に被告主張の登録無効事由があると認めることはできず、本訴請求が権利濫用に該当し許されないとの被告主張は採用できない。
3 争点(三)(技術的範囲への属否)について
(一) 本件考案の構成要件Bの「スナップ機構」の解釈
(1) 本件考案の出願経過は、次のとおりである(甲一、三、五、七、九、一〇)。本件考案の登録出願願書添付の明細書(以下「本件原明細書」という。甲三)の記載は、特許庁審査官の拒絶理由通知(甲七)を受けてなされた補正により、考案の名称が「角筒柱連結知育玩具」から「5角筒柱連結知育玩具」に、実用新案登録請求の範囲に記載の「角筒柱」が「5角筒柱」、同「角筒柱連結知育玩具」が「5角筒柱連結知育玩具」にそれぞれ変更、すなわち出願当初の「角筒柱」を「5角筒柱」に限定する等の変更がなされ、右補正後のものが出願公告時の記載となった(以下、右補正後の明細書を「本件登録明細書」という。但し、実施例に関する記載は変更されておらず、甲一公報3、4頁の各図面は願書添付の図面と同一のものである。)。
(2) 本件登録明細書には、本件考案の構成要件Bの「スナップ機構」について直接定義するところはないが、同明細書記載の、<1>「本件考案・・・の目的とするところは、5角筒柱の角筒面に表現された文字、数字、絵模様等を、5角筒柱を任意に組合わせ、又は分離し、さらには組合わせたものを回転させることにより、文字、数字を並べ変え、あるいは絵模様を合わせる等して、動作に変化を与え、幼児が興味をもってこれらを習得させるにある。」(甲一公報1欄17~25行)、<2>「(問題点を解決するための手段)本考案は、・・・文字、数字、絵模様等を表現した5角筒柱を、その端面における凹凸のスナップ機構によって互いに結合すると共に可回転にして角筒面が一致したところで停止できるように構成することにより、従来の欠点を解消し」(同2欄24行~3欄3行)、<3> 前示の本件考案の作用効果(一)ないし(三)(同4欄24~45行)、<4> 前示の本件考案の実施態様項(同1欄7~14行)及び実施例(同3欄7行~4欄22行、3頁第1図、第3図、第4図、4頁第6~10図)を総合考慮すると、右「スナップ機構」とは、各5角筒柱の端面に設けた凸部と凹部とを着脱自在に嵌合させる構成を前提とし、その材質又は構造上の弾力性を利用して右嵌合接着面の一方に設けた突出部と他方に設けた係合部との係止・離脱を可能とし、これによって、各5角筒柱がその互いの端面に設けた凸部と凹部とで結合し、分離し、かつ、右結合状態で相互間に回転方向の相対運動が与えられたとき、回転するが角筒面が一致した位置において停止するように構成されている機構をいうものと解すべきである。
(3) 被告は、本件考案の「スナップ機構」とは、その考案の効果(甲一公報4欄26~28行)に明記してあるように「角筒面が互いに一致したところで確実に停止することができるように構成されてい」なければならず、そのため具体的には「互いの角筒面が一致したところで凹溝10内の突起12は、弾性片19の弾性に抗して突出(「突起」の誤記と認める。)20を乗越えて、突起20、20の間の凹部21に嵌入して停止」(同欄18~21行)する、すなわち突起12を突起20、20がその間の凹部21においてスナップする(噛みつくようにパチッと閉じる)機構であって、角筒面が一致したところで自動的に確実に停止する構造を有するものに限定されると主張する。しかしながら、本件登録明細書の「従来技術」及び「考案が解決しようとする問題点」に関する記載(甲一公報1欄26行~2欄23行)、並びに前示の本件考案の出願経過に照らすと、本件考案は、<1> 本件考案の「スナップ機構」について、前示の拒絶理由通知書(甲七)が「玩具において、二つの相互に回転する部材を一定の位置で停止する(所定の回転位置で停止する)スナップ機構により互いに結合することは慣用手段にすぎない」と指摘し、例示した従来のスナップ機構、すなわち特開昭四七-一五二三八号公報に開示された技術に比して格別優れたものを採用したのではなく、これと同旨の技術を知育玩具に採り入れることによって5角筒柱を着脱自在に連結(結合、分離)するとともに、結合状態での回転も可能とし、結合した5角筒柱に相対的な回転運動を与えた場合に互いの角筒面が一致したところで停止させることができる、新しいタイプの知育玩具を考案したものであり、<2> 被告主張の本件考案の効果に関する「確実に停止する・・・構成」との記載は、角筒面が一致したところで停止させるための手段をなんら有しない従来のこの種知育玩具(右拒絶理由通知書指摘の、実開昭五三-一四七九九四号公報に開示された、複数の多角筒柱をその端面にて互いに結合、回転、分離できるように構成したブロック玩具、及び実開昭四八-一一九九七号公報に開示された、自在に連結出来るようにした角筒柱の角筒面に数字、文字等を表示した連結ブロック玩具)とは異なり、5角筒柱のブロックを自由に連結したり回転したりすることによって、かな文字による単語や文章の作成、数字、絵模様等の組合わせや並べ変えにより、幼児に遊びながら語彙を広げ、文字や数字等を習得させるという考案の目的を達成するために、結合状態で回転させたとき角筒面が一致したところで積極的に5角筒柱を停止させるための手段を講じている構成との意味に解するのが相当である(右停止後再び幼児が容易に回転できることが前提となっている玩具であるから、当然停止の程度も幼児が停止と感じ取れる程度のもので足りると考えるべきである。)。従って、被告主張のように「スナップ機構」を本件考案の実施例に限定して解釈すべき理由はなく、右被告主張は採用できない。
(二) イ~ニ号物件は、本件考案の構成要件B「その端面に設けた可回転にして角筒面が一致したところで停止するスナップ機構で互いに結合するように構成した」を充足するか。
(1) イ~ニ号物件は、五角筒柱1の下端面8に設けられた円形凹部9に、他の五角筒柱1の上端面2に形成された円周状凸部を組み合わせることにより結合し、結合状態において相互の五角筒柱1が円周状凸部を軸として回転可能であり、可回転の構造を有している(争いがない)。
また、イ~ニ号物件において、円周状凸部を形成する突子4を有する三個の切込片5は、いずれもその材質(プラスチック製)及び形状(両側に間隙6が存し、付け根の外側にU字形抜き孔7を穿設した切込片)から弾力性を有し、しかも切込片5の外周径(三個の突子4の外周方向への突出しの最も高い部分が描く円弧を結んだ円周の径)は円形凹部9の内周径より大きいから、右円周状凸部を他の五角筒柱1の円形凹部9と組み合わせる場合、まず切込片5はほぼ突子4の厚みだけ内側に変形し、更に切込片5の弾性に抗して押圧を続けると、突子4が円形凹部9の内周面に周設されたリング状溝10に落ち込んでこれに係合して両五角筒柱1が結合し、逆に、結合した二個の五角筒柱1を分離するため、切込片5の弾性に抗して五角筒柱1の離脱を図った場合、切込片5はほぼ突子4の厚みだけ内側に変形し、離脱完了時にもとの状態に戻る(イ~ニ号物件目録、検甲一~四、検乙三、五、七の1~3)。
次に、円周状凸部には、三個の切込片5が五角筒柱1の上端面2の各角のうち三つの角a、c、dに対応して形成され、円形凹部9の内周面に周設されたリング状溝10には、一〇個(五対)のリブ11が五角筒柱1の下端面8の各角の全部に対応して配設され、しかも、右各一対のリブ11は、切込片5の有する突子4が係合するに適する位置間隔で各角の両側に配設されているから、結合状態で相互間に回転方向の相対運動が与えられたとき、右各一対のリブ11が突子4と係合することにより五角筒柱1の角筒面が他の五角筒柱1の角筒面と一致したところで停止する(イ~ニ号物件目録、検甲一~四、検乙三、五、七の1~3)。
従って、イ~ニ号物件は本件考案の構成要件Bを充足する。
(2) 被告は、イ~ニ号物件においては、五角筒柱1の五つの角に対し突子4を有する切込片5は三つしか組合わせができないように組合わせが特に不規則な構造にしてあり、しかも円形凹部9の隆起縁9'の湾曲面と切込片5の突子4の湾曲面が間隙をもっているので滑り込みで組合わせがなされるようになっており、更にリブ11とリブ11との間が突子4の幅よりも広く、しかも左右まちまちに配置してあり、突子4はリブ11とリブ11との間で確実に停止することはできず、角筒面が一致したところで確実に停止する構造ではないから、イ~ニ号物件は本件考案の構成要件Bを充足しないと主張する。しかしながら、右主張は、<1> 前記(一)で判示した本件考案の「スナップ機構」、「確実に停止する」の意味、<2> 右(1)で判示したイ~ニ号物件の構造(特に切込片5の弾力性を利用した連結方式であること)、<3> イ~ニ号物件はプラスチック成型品であるから、同物件において角筒面が一致したところで結合した二個の五角筒柱1が停止する際に、両者の間に若干の緩みやズレが生じるのはその成型精度に起因するものであると考えられること(甲二六の1、2、検甲一~四、検乙三、五、七の1~3、弁論の全趣旨)に照らし、採用できない。
(3) 以上によれば、イ~ニ号物件は、本件考案の構成要件をすべて充足する。被告は、イ~ニ号物件においては、<1> 隆起縁9'の存在により五角筒柱1の端面と他の五角筒柱1の端面との間に小隙13が生じて、五角筒柱1の回転が極めてスムースに行われる、<2> 五角筒柱1が中空であることと小球12の存在により、五角筒柱1を回転させると角筒柱内を小球12がころがる音が楽しめるとの、本件考案にはない作用効果を奏する旨主張するが、イ~ニ号物件が本件考案の構成要件をすべて充足する以上、隆起縁9'及び小球12の存在は、イ~ニ号物件が本件考案の技術的範囲に属する旨の前記判断を左右することはできない。
(三) ホ号物件は、本件考案の構成要件Bを充足するか。
(1) ホ号物件は、五角筒柱1の下端面6に設けられた円形凹部8に、他の五角筒柱1の上端面2に形成された円筒形凸部3を組み合わせることにより、相互の五角筒柱1が円筒形凸部3を軸として回転可能であり、可回転の構造を有している(争いがない)。
また、ホ号物件において、その外周面の先端部に三個の突起4が配設された円筒形凸部3は、その材質(プラスチック製)及び形状(上端面が吹抜けの円筒形)から弾力性を有し、しかも突起4を配設した円筒形突部3の先端部の外周径(三個の突起4の外周方向への突出しの最も高い部分が描く円弧を結んだ円周の径)は円形凹部8の内周径より大きいから、右円筒形凸部3を他の五角筒柱1の円形凹部8と組み合わせる場合、まず円筒形凸部3はほぼ突起4の厚みだけ内側に変更し、更に円筒形凸部3の弾性に抗して押圧を続けると、突起4が円形凹部8の内周面に周設されたリング状溝9に落ち込んでこれに係合して両五角筒柱1が結合し、逆に、結合した二個の五角筒柱1を分離するため、円筒形凸部3の弾性に抗して五角筒柱1の離脱を図った場合、円筒形凸部3はほぼ突起4の厚みだけ内側に変形し、離脱完了時にもとの状態に戻る(ホ号物件目録、検甲五、検乙一、二)。なお、ホ号物件には、円形凹部8の端面からリング状溝9に達してこれと連通し、かつ他の五角筒柱1の突起4が挿通する縦溝7が存在するが、実際には突起4を縦溝7に一致・挿通させなくとも、すなわち角筒面がいずれの位置にあっても、五角筒柱1を押圧して突起4を容易にリング状溝9にはめ込んで五角筒柱1を結合し、逆にこれを分離することが可能である(同前)。
次に、円筒形凸部3の外周面の先端部には、突起4(合計三個)が五角筒柱1の上端面2の一の角aとそれに対向する辺の両側の角c、dに対応する位置の三か所に角a、c、dの各頂点と円筒形凸部3の中心点とを結ぶ各線上を中心として左右ほぼ対称形となるように配設され、円形凹部8の内周面に周設されたリング状溝9には、下端面6の各角のそれぞれに対応する位置に一〇個(五対)のリブ10が右各角の各頂点と円形凹部8の中心点を結ぶ各線上を中心として左右ほぼ対称形となるようにして配設され、しかも、右各一対のリブ10は、円筒形凸部3に配設された突起4が係合するに適する位置間隔で右各角の両側に配設されている(ホ号物件目録)。そのため、ホ号物件のうちには、結合状態で相互間に回転方向の相対運動が与えられたとき、右各一対のリブ10の間に突起4が係合することにより五角筒柱1の角筒面が他の五角筒柱1の角筒面と一致したところで停止するもの(ホ号物件(一))がある(検乙二)。また、ホ号物件のうちには、イ~ニ号物件の突子4及びホ号物件(一)の突起4と比べてその外周方向への突出し高さが低いために、突起4が右各一対のリブ10の間に係合する力が弱いから、結合した二個の五角筒柱1は互いの角筒面が一致したところで停止することがないもの(ホ号物件(二))もある(検甲一~五、検乙一~三)。ちなみに、ホ号物件(二)の円形凹部8にイ~ニ号物件の円周状凸部又はホ号物件(一)の円筒形凸部3を組み合わせると、結合した二個の五角筒柱1は角筒面が一致したところで停止するが、ホ号物件(二)の円筒形凸部3をイ~ニ号物件の円形凹部9又はホ号物件(一)の円形凹部8に組み合わせても、結合した二個の五角筒柱1は角筒面が一致したところで停止することがない(同前)。
従って、ホ号物件(一)は、本件考案の構成要件Bを充足するが、ホ号物件(二)は、右構成要件Bを充足しない。
(2) ホ号物件として提出された検証物は、検甲第五号証(三個)、検乙第一号証(八個)及び検乙第二号証(四個)である。そのうち、突起4(合計三個)の外周方向への突出し高さ(突起4の外周方向への幅と円筒形凸部3の突起4が配設されていない部分の外周方向への幅との差で、単位はミリメートル)の組合わせが、上端面の角a、c、dに対応する位置の順に、<1>〇・二〇、〇・四〇、〇・三五、<2>〇・四五、〇・五五、〇・三五であるもの(以上、検乙二のうちの二個)は、角筒面が一致したところで停止するが、その余のものは三個の突起4の外周方向への突出し高さが右二個のものに達せず(すなわち、最高位のものの対比において、また高さ合計の対比において達しない。)、角筒面が一致したところで停止しない。右によれば、ホ号物件のうち、三個の突起4が各一対のリブ10の間に位置したときに各突起4が各一対のリブ10の間に係合する力において、三個の突起4の外周方向への突出し高さの組合わせが右<1>であるものが各一対のリブ10の間に位置したときに相互の五角筒柱1の回転阻止のために働く力と少なくとも同一であるかそれ以上のものが、角筒面が一致したところで停止するもの、すなわちホ号物件(一)であると認めるのが相当である。
(3) 被告は、ホ号物件においては、五角筒柱1の五つの角に対し突起4は組合わせが不規則になるような三つの位置に配置してあり、しかも円筒形凸部3と円形凹部8とは同質の合成樹脂製であるから突起4が円形凹部8に滑り込みで組合わせがなされるようになっており、更にリブ10とリブ10との間が突起4の幅よりも広く、左右まちまちに配置してあり、しかも突起4はリブ10に引っ掛かることがないように平滑湾曲状に形成してあり、突起4はリブ10とリブ10との間で確実に停止することはできず、角筒面が一致したところで確実に停止する構造ではないから、ホ号物件は本件考案の構成要件Bを充足しないと主張する。しかしながら、右主張は、ホ号物件(二)については右(1)で判示した限度で理由があるが、ホ号物件(一)については、<1>前記(一)で判示した本件考案の「スナップ機構」、「確実に停止する」の意味、<2>右(1)で判示したホ号物件(一)の構造(特に円筒形凸部3の弾力性を利用した連結方式であること)、<3>ホ号物件はプラスチック成型品であるから、ホ号物件(一)において角筒面が一致したところで結合した二個の五角筒柱1が停止する際に、両者の間に緩みやズレが生じて停止状態が不安定になるのは、その成型精度にも起因するものであると考えられること(検乙二、弁論の全趣旨)に照らし採用できない。
(4) 以上によれば、ホ号物件(一)は、本件考案の構成要件をすべて充足する。被告は、ホ号物件においては、縦溝7の存在により五角筒柱1の連結(結合、分離)が容易に行なえるとの本件考案にはない作用効果を奏する旨主張するが、ホ号物件(一)が本件考案の構成要件をすべて充足する以上、縦溝7の存在は、ホ号物件(一)が本件考案の技術的範囲に属する旨の前記判断を左右することはできない。また、隆起縁8'及び小球11の存在についても同様である。
(四) ホ号物件は、南澤考案の実施品であって、本件考案の技術的範囲に属さないということができるか。
被告は、ホ号物件は南澤考案の実施品であって、本件考案の技術的範囲に属さないものであると主張するが、仮にホ号物件が南澤考案の実施品であるとしても、同考案は「角筒面が一致したところで停止するスナップ機構」をその構成要件としておらず、これを構成要件とする本件考案の技術的範囲に属するホ号物件(一)については、右被告主張を採用できない。
(五) へ号物件は、本件考案の構成要件A、B、Cを充足しているか。
へ号物件は、本件考案の構成要件Bを充足しない。すなわち、へ号物件においては、円筒形凸部3の外周面の先端部には、突起4(合計三個)が十角筒柱1の一の小さな角筒面12aとそれに対向する大きな角筒面11cの両側の小さな角筒面12c、12dに対応する位置の三か所に右小さな角筒面12a、12c、12dの各上辺の中点と円筒形凸部3の中心点とを結ぶ各線上を中心として左右ほぼ対称形となるように配設され、円形凹部8の内周面に周設されたリング状溝8には、一〇個(五対)のリブA9が五つの小さな角筒面の各下辺に対応する位置に、突起4が組合わせ可能な間隔をおいて、右下辺の中点と円形凹部7の中心点とを結ぶ各線上を中心として右各下辺の両端に対応する位置に配設されている(へ号物件目録、検甲六、検乙四)ものの、前示のホ号物件(二)と同様に、へ号物件の突起4は滑らかな湾曲状に形成されており、イ~ニ号物件の突子4と比べてその外周方向への突出し高さが低いために、突起4が右各一対のリブA9の間に係合しないから、組み合わせた(すなわち結合した)二個の十角筒柱1に回転を与えた場合、互いの角筒面が一致したところで停止することがない(検甲一~六、検乙一~四)。ちなみに、へ号物件の円形凹部7にイ~ニ号物件の円周状凸部を組み合わせると、結合した二個の五角筒柱1は角筒面が一致したところで停止するが、へ号物件の円筒形凸部3をイ~ニ号物件の円形凹部9に組み合わせても、結合した二個の五角筒柱1は角筒面が一致したところで停止しない(同前)。
従って、その余の点について判断するまでもなく、へ号物件は本件考案の技術的範囲に属しない。
(六) イ~ニ号物件及びホ号物件(一)は、被告意匠権の実施品であって、本件考案の技術的範囲に属さないということができるか。
被告は、イ~ニ号物件及びホ号物件(一)は、いずれも被告意匠権の実施品であって隆起縁及び小隙が存在する形状となっており、本件考案の「角筒面が一致したところで確実に停止する機構」を具備しないから、本件考案の技術的範囲に属さないと主張する。しかしながら、本件考案(昭和五六年五月二〇日出願)が被告意匠(昭和五九年一一月一二日出願)より前に出願されたものであり、しかもイ~ニ号物件及びホ号物件(一)は本件考案の技術的範囲に属するものであることは前示のとおりであるから、仮にこれらが被告意匠権の実施品であるとしても、その製造販売行為の違法性は阻却されず、右被告主張は失当であり採用できない。
(七) 製造販売停止・廃棄請求の当否
以上によれば、被告が業としてイ~ニ号物件及びホ号物件(一)を製造、販売することは、いずれも本件実用新案権を侵害するものであるが、ホ号物件(二)及びへ号物件の製造販売は、いずれも右権利を侵害するものではないというべきである。被告は現在イ~ニ号物件及びホ号物件(一)の製造販売を中止しているが、それは本件仮処分申請認容決定及び本件仮処分執行を受けたために一時的に中止したものであって、将来右製造販売をするおそれがある。従って、原告の本訴製造販売停止・廃棄請求は、イ~ニ号物件及びホ号物件(一)の製造販売停止及び右各物件等の廃棄を求める限度で理由があるが、その余は理由がない。
4 争点(四)(被告が支払うべき補償金及び損害金)について
(一) 被告のイ~ニ号物件及びホ号物件の売上高
(1) 被告のイ~ニ号物件及びホ号物件の販売状況は、別紙「被告販売状況一覧表」(以下「被告販売状況一覧表」という。)記載のとおりである(乙一九、四〇の1~17、四〇の2のa~y、四〇の3のa~e、四〇の4のa~f、四〇の5のa~q、四〇の6のa~j、四〇の7のa~f、四〇の8のa~g、四〇の9のa~i、四〇の10のa~o、四〇の11のa~d、四〇の12のa、b、四〇の13のa~h、四〇の14のa~i、四〇の15のa~o、四〇の16のa~i、四〇の17のa~d、被告本人、弁論の全趣旨)。なお、原告は、同一覧表一欄(C)を「九八万二三二〇円」、同欄合計を「一八七二万一九〇八円」、二欄(A)を「二二万二二五〇円」、同欄(C)を「九八万二三二〇円」、同欄合計を「六三四万六二四八円」と主張するが、右各証拠によれば、前示のとおり同一覧表一欄(C)は「九八万二三三〇円」、同欄合計は「一八七二万一九一八円」、二欄(A)は「二五万四四一〇円」、同欄(C)は「九八万二三三〇円」、同欄合計は「六三七万八四一八円」であると認められる。
(2) 被告販売状況一覧表によれば、販売期間別の被告の売上高(販売総額)は、次のとおりである。
<1> 昭和五九年一一月二一日から昭和六〇年一〇月八日(本件考案の出願公告日の前日)までの間、イ~ニ号物件及びホ号物件を合計一八七二万一九一八円(被告販売状況一覧表一欄の合計額)。
<2> 昭和六〇年一月二八日(本件警告<1>がなされた日の翌日)から同年一〇月八日までの間、イ~ニ号物件及びホ号物件を合計六三七万八四一八円(同一覧表二欄の合計額)。
<3> 昭和六〇年一〇月九日(本件考案の出願公告日)から昭和六一年二月一五日(本件仮処分執行がなされた日)までの間、ホ号物件を合計四一九万四六四〇円(同一覧表三欄の合計額)。
(3) 前記3(争点(三))の判示によれば、争点(四)について判断の対象となるのは、イ~ニ号物件及びホ号物件(一)である。しかしながら、被告販売状況一覧表記載の売上高には、本件考案の技術的範囲に属さないホ号物件(二)の売上分(後記判示参照)のほか、いったん被告の販売先である玩具問屋へ納品された後、右販売先から被告に返品された分(乙四〇の4のa'、四〇の6のa'、b'、四〇の7のa'、b'、四〇の8のa'~d'、四〇の10のa'、四〇の12のa'、四〇の14のa'、四〇の16のa')も含まれているから、本訴補償金の算定にあたっては右売上高から右返品額を、同損害金の額を算定にあたっては右売上高から右返品額及びホ号物件(二)の販売額を控除する必要がある。
(4) 前示のとおりホ号物件はイ~ニ号物件の金型を設計変更して製造されたものであるが、右設計変更の時期は、本件警告<1>、同<2>及び当初仮処分申請がなされた後の昭和六〇年五月ころであること、被告作成の「ベビコンもじあそび販売数及び経過」と題する書面(乙一九)には「(昭和六一年一月から)連結して、クルクル回る、ブロックに製造改良し製造販売する。」との記載があること、原告がホ号物件(二)を入手したのは昭和六一年一月ころであること(甲一五、検甲五、弁論の全趣旨)に照らすと、被告は本件仮処分申請がなされた昭和六〇年末をもってホ号物件(一)の製造販売を止め、昭和六一年一月からホ号物件(二)の製造販売を開始したものと推認されるから、右(3)の控除すべきホ号物件(二)の売上分とは同月以降のホ号物件の売上分である。
(二) 補償金
(1) 原告は、被告が本件考案出願公開の事実を知りながら、イ~ニ号物件及びホ号物件を製造販売したと主張するが、右事実を認めるに足りる証拠はない。従って、原告の本訴補償金請求の対象となるのは、昭和六〇年一月二八日(本件警告<1>がなされた日の翌日)から同年一〇月八日(本件考案の出願公告日の前日)までの間である。そうすると、被告販売状況一覧表二欄の合計額六三七万八四一八円から右(一)(3)の返品額五五万八二六八円(株式会社辰巳屋・一〇万二〇〇〇円〔乙四〇の7のb'〕、福岡商店・二八万七三六八円〔乙四〇の10のa'の三四万二〇八八円から本件警告<1>前に販売したものの返品分と推認される五万四七二〇円を控除した金額〕及び株式会社森本正商店・一六万八九〇〇円〔乙四〇の14のa'〕の合計)を控除した五八二万〇一五〇円が、本訴補償金算定の基礎となる被告のイ~ニ号物件及びホ号物件(一)の売上高(販売総額)と認められる。
(2) 本件考案の実施に対し通常受けるべき金銭の額を算定するための実施料率については、他によるべき資料がないので、当裁判所に顕著な国有特許権実施契約書(官有特許運営協議会決定、昭和二五年二月二七日特総第五八号、改正昭和四二年五月二六日特総第五三三号、改正昭和四七年二月九日特総第八八号、特許庁長官通牒)の「実施料算定方式」を参照することとし、これによれば、実施料率は、「実施料率=基準率×利用率×増減率×開拓率」の算式によって求められる。そして、販売価格を基礎として実施料を算定する場合の基準率は、実施価値の上、中、下により四、三、二パーセントの中から選択されるものであるが、本件考案については、実施価値を高いとも低いとも認めるべき特段の資料もないから、実施価値を「中」とみて基準率を三パーセントとするのが相当である。次に、利用率、増減率及び開拓率については、いずれも一〇〇パーセントから減ずべき特段の事情も認められないから、いずれも一〇〇パーセントとすべきである。そうすると、本件考案の実施料率は、前記算式により三パーセントとなる。
(3) 従って、被告がイ~ニ号物件及びホ号物件(一)を製造販売したことについての実施料相当額は、前示の右各物件の販売総額五八二万〇一五〇円に三パーセントを乗じて得られる一七万四六〇四円(円未満切捨て)となる。
(三) 損害
(1) 本件考案の出願公告後、被告は本件考案の出願公告に基づく仮保護の権利に対する侵害につき過失があったものと推定される。また、前示のとおり、昭和六〇年一〇月九日(本件考案の出願公告日)から昭和六一年二月一五日(本件仮処分執行がなされた日)までの間、本件考案の実施品である「ぺんたくん」とホ号物件(一)とは市場において競合していたから、被告が右期間中右各物件の製造販売により得た利益が原告の損害(逸失利益)と推定される。そうすると、被告販売状況一覧表三欄の合計額四一九万四六四〇円から前記(一)(3)の返品額一〇九万〇四五二円(株式会社カネヒサ・六七万九〇五六円〔乙四〇の12のa'〕及び株式会社エーワン・四一万一三九六円〔乙四〇の16のa'の五三万〇六七六円から後記ホ号物件(二)の販売額一一万九二八〇円を控除した額〕の合計)及びホ号物件(二)の販売額二二万一〇四〇円(成近屋・五万三五二〇円〔乙四〇の5のq〕、株式会社森本正商店・四万八二四〇円〔乙四〇の14のi〕及び株式会社エーワン・一一万九二八〇円〔乙四〇の16のf~i〕の合計)を控除した二八八万三一四八円が、右損害金算定の基礎となる被告のホ号物件(一)の売上高(販売総額)と認められる。そして、右各物件製造販売による被告の純利益は玩具問屋への販売価格の三〇パーセントである(争いがない)から、右被告の得た利益相当損害金は、前示の右各物件の販売総額二八八万三一四八円に三〇パーセントを乗じて得られる八六万四九四四円(円未満切捨て)となる。
(2) 原告は、本件紛争解決のためにその訴訟代理人弁護士に訴訟委任を行ない、その着手金及び報酬として合計四〇〇万円の支払を約し、昭和六〇年四月二三日右着手金として一〇〇万円を支払済である(甲三〇、弁論の全趣旨)。本件事案の内容と手続の進行、原告の本訴請求とその認容の程度、その他本件にあらわれた一切の事情を総合考慮すると、右四〇〇万円のうち前示の被告の不法行為と相当因果関係に立つ損害は三〇〇万円と認めるのが相当である。
(四) 結論
以上によれば、原告の本訴補償金及び損害賠償請求は、(二)及び(三)の認定額の合計四〇三万九五四八円及びこれに対する民法所定の遅延損害金(但し、未払の弁護士費用二〇〇万円については本判決言渡日からとする。)の支払を求める限度で理由がある。
二 反訴関係
1 争点(一)(本件警告<2>等及び本件仮処分執行が違法な営業妨害行為に当たるか否か。)について
被告は、本件警告<2>等及び本件仮処分執行が違法な営業妨害行為、すなわち被告に対する不法行為に当たると主張するが、(一) 前示の本件警告<2>及び本件仮処分執行に至る経緯、(二) 右経緯から明らかなように、本件警告<2>の対象物件はイ号物件、ロ号物件及びハ号物件であり、本件仮処分申請の対象物件はイ~ニ号物件及びホ号物件(一)であり、いずれも本件考案の技術的範囲に属するものであること、(三) 被告はイ~ニ号物件の製造販売開始に先立ち、原告が「ぺんたくん」を製造販売していることを知っており、しかもその現物を入手していたこと(被告本人)、(四) 前示のとおり、被告はイ号物件の販売を開始した直後である昭和五九年一一月二六日に被告考案の実用新案登録出願をしているが、右願書添付の明細書には実用新案登録請求の範囲として「多面形柱体1の上端面2に円弧状突起3と先端に鈎部4を有する係止杆5をそれぞれ3個ずつ交互に若干の間隙6をおいて円周状に整列形成すると共に該係止杆5の下部にU字形抜き孔7を穿設し、また下端面には上記円弧状突起3と係止杆5が形成する円周状突出部が嵌合すべき円形凹部9を設け、その最奥部にリング状溝10を周設し、さらにそのリング状溝10に上記間隙6に対応するリブ11を多面体の面数に等しい数を突設した組み木の構造。」(乙三六公報)、考案の詳細な説明として「本考案は・・・、プラスチックの弾力性を利用し、幼児の腕力でも容易に組み合わせ、回転し、かつ分離できるようにしたことに特徴を有する。」、「・・・本案組み木は係止杆5が鈎部4を有するにも拘わらず、該係止杆5の根本のところにU字形抜き孔7を有するがために中心方向に傾斜しやすく、かつ復元するという弾力性が得られる。従って円弧状突起3と係止杆5とが形成する円周状整列体は円形凹部9に容易に挿入することができ、しかも完全に嵌合されると鈎部4がリング状溝10に係合し、その左右に設けた間隙6、6がリブ11、11に噛み合ったとき係止杆5がその弾力性をもって直立し多面体の面が一致した点で固定されることとなる。該リブ11、11は図面(乙三六公報の図面と同じ)の場合5ケ所に設けられているために二つの組み木を逆方向に回転することによってそれぞれ異なった面に合わせることができる。」と記載されていること(乙一三)、並びに前示の本件考案の構成要件Bの「スナップ機構」の意味及びイ~ニ号物件目録からすると、被告考案の構成は本件考案の「スナップ機構」を具備するものであると認められること(ちなみに被告は、本訴において当初イ~ニ号物件は被告考案の実施品であり、本件考案の技術的範囲に属さないと主張していた。)、(五) 前示のとおり、被告は、本件警告<1>、同<2>及び当初仮処分申請がなされた後の昭和六〇年四月一九日に南澤考案につき専用実施権設定契約を締結し、同年五月ころから同考案の実施品であると称してホ号物件(一)の製造販売を開始したが、ホ号物件(一)の金型はイ~ニ号物件の金型を設計変更したものにすぎないから、ホ号物件(一)への設計変更及び同物件の製造販売は原告の追及を回避するためになされたものであると推認されることに照らすと、本件警告<2>は本件考案の補償金請求権行使のための正当な行為、本件仮処分執行は出願公告に基づく本件考案の仮保護の権利を保全するための正当な行為と認めるのが相当であり、いずれも被告に対する違法な営業妨害行為と認めることはできない。
2 結論
以上によれば、争点(二)(損害発生の有無及び損害の額)について判断するまでもなく、被告の反訴請求は理由がない。
(裁判長裁判官 庵前重和 裁判官 長井浩一 裁判官 辻川靖夫)
別紙一
イ~ニ号物件目録
一 図面の説明
第1図は五角筒柱二個を組み合わせた側面図、第2図は五角筒柱の縦断面図、第3図は五角筒柱の上端面図、第4図は五角筒柱の下端面図である。
二 図面の符号の説明
1 五角筒柱 2 上端面 3 長い円弧状突起 3' 短い円弧状突起
4 突子 5 切込片 6 間隙 7 U字形抜き孔
8 下端面 9 円形凹部 9' 隆起縁 10 リング状溝
11 リブ 12 小球 13 小隙
三 構造の説明
1〔イ号物件〕角筒面に本物件目録添付の展開図面一のひらかな文字等を印刷しな
シールを貼付した五角筒柱1であって、
〔ロ号物件〕角筒面に本物件目録添付の展開図面二の算用数字等を印刷したシールを貼付した五角筒柱1であって、
〔ハ号物件〕角筒面に本物件目録添付の展開図面三の絵模様(とけい、ばった、うさぎ、さかなの一部及びいす、にんじん、さくら、鹿、御飯、ロケット、なすび、はさみ、くらげ、十字)あるいは記号(+、-、=)等を印刷したシールを貼付した五角筒柱1であって、
〔ニ号物件〕角筒面に本物件目録添付の展開図面四の絵模様(かさ、すいか、あひる、えんとつ、けんびきょう等)及びかな文字等を印刷したシールを貼付した五角筒柱1であって、
2(1) 五角筒柱1の上端面2には、
<1> 中央部に先端外側に突子4を有する三個の切込片5と二個の長い円弧状突起3及び一個の短い円弧状突起3'とを、切込片と円弧状突起とが交互になるように六個の若干幅の間隙6をおいて円周状に整列させた円周状凸部を形成し、
<2> 該三個の切込片5を上端面2の一の角aとそれに対向する辺の両側の角c、dに近接して、それぞれ角a、c、dの各頂点と円周状凸部の中心点とを結ぶ各線上を中心として左右ほぼ対称になるように配設し、
<3> 該二個の長い円弧状突起3を角aを構成する二辺の反対側の角b、eに近接して、それぞれ角b、eの各頂点と円周状凸部の中心点とを結ぶ各線上を中心として左右ほぼ対称になるように配設すると共に、該一個の短い円弧状突起3'を角aに対向する辺に近接して角aの頂点と円周状凸部の中心点とを結ぶ線の延長線上を中心として左右ほぼ対称になるように配設し、
<4> 各切込片5の付け根の外側にU字形抜き孔7を穿設し、
(2) 五角筒柱1の下端面8には、
<1> 中央部に円形凹部9を設けるとともに、
<2> その外周部に隆起縁9'を形成し、
<3> 円形凹部9の内周面に他の五角筒柱1の切込片5の有する突子4が組み合わせ可能なリング状溝10を周設し、
<4> 該リング状溝10には下端面8の各角a'、b'、c'、d'、e'に対応する位置に近接して五対一〇個のリブ11を、各一対のリブは他の五角筒柱1の突子4が組み合わせ可能な間隔をおいて、角a'、b'、c'、d'、e'の各頂点と円形凹部9の中心点とを結ぶ各線上を中心にして右各角の両側に配設し、
(3) 円形凹部9には他の五角筒柱1の円周状凸部を小隙13を存して組み合わせて相互の五角筒柱1が円周状凸部を軸として回転可能にして、
(4) 五角筒柱1内に小球12を収納してなる(但し、小球12を収納していないものもある)
3 五角筒柱連結知育玩具
イ~ニ号図面
<省略>
(但し、イ号乃至ニ号物件には小球12は収納されていないものもある。)
(角a、b、c、d、eは第4図に図示した角a'、b'、c'、d'、e'と対応するものである。)
(但し、リブ11は点線で図示すべきところ、便宜上実線で図示した。)
展開図面一
<省略>
展開図面二
<省略>
展開図面三
<省略>
展開図面四
<省略>
別紙二
ホ号物件目録
一 図面の説明
第1図は五角筒柱二個を組み合わせた側面図、第2図は五角筒柱の縦断面図、第3図は五角筒柱の上端面図、第4図は五角筒柱の下端面図である。
二 図面の符号の説明
1 五角筒柱 2 上端面 3 円筒形凸部 4突起
5 U字形抜き孔 6 下端面 7 縦溝 8 円形凹部
8' 隆起縁 9 リング状溝 10 リブ 11 小球
12 小隙
三 構造の説明
1 角筒面に別紙一イ~ニ号物件目録添付の展開図面一ないし四の算用数字、絵模様、記号、かな文字等を印刷したシールを貼付した五角筒柱1であって
2(1) 五角筒柱1の上端面2には、
<1> 中央部に円筒形凸部3を設け、
<2> その外周面の先端部に上端面2の一の角aとそれに対向する辺の両側の角c、dに対応する位置の三か所に角a、c、dの各頂点と円筒形凸部3の中心点とを結ぶ各線上を中心として左右ほぼ対称になるように突起4を配設し、
<3> 該三個の突起4に対応する円筒形凸部3の付け根の外側にU字形抜き孔5を穿設し、
(2) 五角筒柱1の下端面6には、
<1> 中央部に円形凹部8を設けるとともに、
<2> その外周部に隆起縁8'を形成し、
<3> 円形凹部8の内周面に他の五角筒柱1の突起4が組み合わせ可能なリング状溝9を周設するとともに、
<4> 円形凹部8の端面からリング状溝9に達してこれと連通し、かつ他の五角筒柱1の突起4が挿通する縦溝7を、下端面6の各辺の中央部分に対応する位置の五か所に右各辺の中点と円形凹部8の中心点とを結ぶ各線上を中心にして左右ほぼ対称になるように配設し、
<5> 該リング状溝9には下端面6の各角a'、b'、c'、d'、e'に対応する位置に五対一〇個のリブ10を、各一対のリブは他の五角筒柱1の突起4が組み合わせ可能な間隔をおいて、角a'、b'、c'、d'、e'の各頂点と円形凹部8の中心点とを結ぶ各線上を中心にして右各角の両側に配設し、
(3) 円形凹部8には他の五角筒柱1の円筒形凸部3を小隙12を存して組み合わせて相互の五角筒柱1が円筒形凸部3を軸として回転可能にして、
(4) 五角筒柱1内に小球11を収納してなる
3 五角筒柱連結知育玩具
ホ号図面
<省略>
別紙三
へ号物件目録
一 図面の説明
第1図は十角筒柱二個を組み合わせた側面図、第2図は十角筒柱の縦断面図、第3図は十角筒柱の上端面図、第4図は十角筒柱の下端面図である。
二 図面の符号の説明
1 十角筒柱 2 上端面 3 円筒形凸部 4 突起
5 U字形抜き孔 6 下端面 7 円形凹部 7' 隆起縁
8 リング状溝 9 リブA 10 リブB 11 大きな角筒面
12 小さな角筒面 13 小球 14 小隙
三 構造の説明
1. 算用数字、絵模様、記号、かな文字等を印刷したシールを貼付する大きな角筒面11と小さな角筒面12とを交互に配した十角筒柱1であって、
2(1) 十角筒柱1の上端面2には、
<1> 中央部に円筒形凸部3を設け、
<2> その外周面の先端部に十角筒柱1の一の小さな角筒面12aと、それに対向する大きな角筒面11cの両側の小さな角筒面12c、12dに対応する位置の三か所に右各小さな角筒面12a、12c、12dの各上辺の中点と円筒形凸部3の中心点とを結ぶ各線上を中心として左右ほぼ対称になるように突起4を配設し、
<3> 該三個の突起4に対応する円筒形凸部3の付け根の外側にU字形抜き孔5を穿設し、
(2) 十角筒柱1の下端面6には、
<1> 中央部に円形凹部7を設けるとともに、
<2> その外周部に隆起縁7'を形成し、
<3> 円形凹部7の内周面に他の十角筒柱1の突起4が組み合わせ可能なリング状溝8を周設し、
<4> 該リング状溝8には各小さな角筒面12a、12b、12c、12d、12eの各下辺に対応する位置に五対一〇個のリブA9を、各一対のリブA9は他の十角筒柱1の突起4が組み合わせ可能な間隔をおいて、右各下辺の中点と円形凹部7の中心点とを結ぶ各線上を中心にして右各下辺の両端に対応する位置に配設するとともに、各大きな角筒面11a、11b、11c、11d、11eの各下辺の中点にほぼ対応する位置に各一個(合計五個)のリブB10を配設し、
(3) 円形凹部7には他の十角筒柱1の円筒形凸部3を小隙14を存して組み合わせて、相互の十角筒柱1が円筒形凸部3を軸として回転可能にして、
(4) 十角筒柱1内に小球13を収納してなる
3.十角筒柱連結知育玩具
ヘ号図面
<省略>
別紙目録一
角筒面に、本目録添付の展開図面一のひらがな文字等を印刷したシールを貼付した、別紙図面の形状をした五角筒面を、その上端面2に設けた円弧状突起3、鈎部4、係止杵5、下端面8に設けた円形凹部9、リング状溝10、リブ11で構成された、可回転にして角筒面が一致したところで停止するスナップ機構で、互いに結合するように構成した、五角筒柱連結知育玩具。五角筒柱ブロックの構造は別紙図面及びその説明書のとおり.
展開図面一
<省略>
別紙目録二
角筒面に、本目録添付の展開図面二の算用数字等を印刷したシールを貼付した、別紙図面の形状をした五角筒面を、その上端面2に設けた円弧状突起3、鈎部4、係止杵5、下端面8に設けた円形凹部9、リング状溝10、リブ11で構成された、可回転にして角筒面が一致したところで停止するスナップ機構で、互いに結合するように構成した、五角筒柱連結知育玩具.五角筒柱ブロックの構造は別紙図面及びその説明書のとおり.
展開図面二
<省略>
別紙目録三
角筒面に、本目録添付の展開図面三の絵模様(とけい、ばった、うさぎ、さかなの一部および椅子、にんじん、さくら、鹿、御飯、ロケット、なすび、はさみ、くらげ、十字)あるいは記号(+、-、=)等を印刷したシールを貼付した、別紙図面の形状をした五角筒面を、その上端面2に設けた円弧状突起3、鈎部4、係止杵5、下端面8に設けた円形凹部9、リング状溝10、リブ11で構成された、可回転にして角筒面が一致したところで停止するスナップ機構で、互いに結合するように構成した、五角筒柱連結知育玩具.五角筒柱ブロックの構造は別紙図面及びその説明書のとおり.
展開図面三
<省略>
別紙目録四
角筒面に、本目録添付の展開図面四の絵模様(かさ、すいか、あひる、えんとつ、けんんびきよう等)およびかな文字等を印刷したシールを貼付した、別紙図面の形状をした五角筒面を、その上端面2に設けた円弧状突起3、鈎部4、係止杵5、下端面8に設けた円形凹部9、リング状溝10、リブ11で構成された、可回転にして角筒面が一致したところで停止するスナップ機構で、互いに結合するように構成した、五角筒柱連結知育玩具.五角筒柱ブロックの構造は別紙図面及びその説明書のとおり.
展開図面四
<省略>
別紙図面
<省略>
図面の説明書
第1図は五角筒柱ブロック二個を組みつけた状態を示す正面図、第2図はその側面図、第3図は縦断面図である.
五角筒柱の両側面の一辺の長さは約三・八センチメートルである。
1 組み木本体 2 上端面
3 円弧状空起 4 鈎部
5 係止杆 6 間隙
7 U字形抜き孔 8 下端面
9 円形凹部 10 リング状溝
11 リブ
別紙目録五
角筒面に、別紙目録二乃至四添付の展開図二乃至四の算用数字、絵模様、記号、かな文字等を印刷したシールを貼付した、別紙図面二の形状をした、五角筒面を、その上端面2に設けた円弧状特記3、鈎部4、下端面7に設けた円形凹部8、リング状溝9、リブ10、縦溝5で構成された、可回転にして各筒面が一致したところで停止するスナップ機構で互いに結合するように構成した、五角筒柱連結知育玩具.五角筒柱ブロックの構造は別紙図面二及びその説明書のとおり.
別紙図面二
<省略>
図面の説明書
第1図は五角筒柱ブロック二個を組みつけた状態を示す正面図、第2図はその側面図、第3図は縦断面図である.
五角筒柱の両側面の一辺の長さは約三・八センチメートルである.
1 組み木本体 2上端面
3 円弧状突起 4鈎部
5 縦溝 6 U字形抜き孔
7 下端面 8 円形凹部
9 リング状溝 10リブ
公開実用新案公報(一) <19>日本国特許庁(JP) <11>実用新案出願公開
<12>公開実用新案公報(U) 昭61-94096
<51>Int.Cl.4A 63 H 33/08 識別記号 庁内整理番号 2107-2C <43>公開 昭和61年(1986)6月17日
審査請求 有
<34>考案の名称 組み木の構造
<21>実願 昭59-179629
<22>出願 昭59(1984)11月26日
<72>考案者 柏木城二 東大阪市菱屋東327番地
<71>出願人 枯木城二 東大阪市菱屋東327番地
実用新案登録請求の範囲
面形柱体1の上端面2に円弧状突起3と先端に端部4を有する係止杆5をそれぞれ3個ずつ交互に若干の間隙6をおいて円周状に整列形成すると共に該係止杆5の下部にU字形抜き孔7を穿設し、また下端面には上記円弧状突起3と係止杆5が形成する円周状突出部が嵌合すべき円形凹部3を設け、その最部にリング状溝10を周設し、さらにそのリング状溝10に上記間隙6に対応するリブ11を多面体の面数に等しい数を突設した組み木の構造。
図面の簡単な説明
図面は本考案の実施例を示すもので、第1図は2個を組みつけた状態を示す正面図、第2図はその側面図、第3図は組み木の縱断面図である.
1…組み木本体、2…上端面、3…円弧状突起、4…端部、5…係止杆、6…間隙、7…U字形抜き孔、8…下端面、9…円形凹部、10…リング状溝、11…リブ.
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
公開実用新案公報(二) <19>日本国特許庁(JP) <11>実用新案出願公開
<12>公開実用新案公報(U) 昭57-87796
<51>Int.Cl.3A 63 H 33/08 識別記号 庁内整理番号 7318-2C <43>公開 昭和57年(1982)5月29日
審査請求 未請求
<54>クルクル回るブロック・積木 <72>考案者 南澤巳代治 奈良市押熊町490
<21>実願 昭55-164077 <71>出願人 南澤巳代治 奈良市押熊町490
<22>出願 昭55(1980)11月15日
実用新案登録請求の範囲
(イ) ブロツクの表面の中央を凹、又は、凸に形成している。
(ロ) 凹部面3に輪溝7と横溝8を施し、凸部面4に突起部5を設けてある。クルクル回るブロツク、積木。
図面の簡単な説明
第1図は、本案を組み合わせた平面図、第2図は、本案を組み合わせた正面図、第3図は、本案を組み合わせた側面図、第4図は、本案のブロツク両表面を凹凸にして組み合わせた正面図、第5図は、第4図の側面図、第6図は、本案第2図のA-A断面拡大図、第7図は、本案第2図を分離した斜視図、第8図は、第4図の1ブロツクの斜視図、第9図は、第8図ブロツクを三個連結した実施例図、第10図は、第2図を積木した実施例図、第11図は、本案の突起部を三形にして下部にバネを設けた組み合わせ断面拡大図、第12図は、本案を組み合わせて回転軸を通し右半分断面状態図、第13図は、第12図の側面図。
1は、凹ブロツク、2は、凸ブロツク、2Aは、凹、凸ブロツク、3は、凹部面、4は、凸部面、5は、突起部、6は、接触部面、7は、輪溝、8は、横溝、9は、図表面、10は、バネ、11は、回転軸(通し又はボルト)。
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
第4図
<省略>
第5図
<省略>
第6図
<省略>
第7図
<省略>
第8図
<省略>
第9図
<省略>
第10図
<省略>
第11図
<省略>
第12図
<省略>
第13図
<省略>
実用新案公報(一) <19>日本国特許庁(JP) <11>実用新案出願公告
<12>実用新案公報(Y2) 昭60-33999
<51>Int.Cl.4A 63 H 33/08 G 09 B 1/10 識別記号 庁内整理番号 2107-2C 6612-2C <24><44>公告 昭和60年(1985)10月9日
<54>考案の名称 5角筒柱連結知育玩具
<21>実願 昭56-72779 <65>公開 昭57-185396
<22>出願 昭56(1981)5月20日 <43>昭57(1982)11月25日
<72>考案者 薬師院 実美 大阪市北区堂島1丁目5番17号 堂島グランドビル6階
<71>出願人 ブツク・ローン出版株式会社 神戸市中央区多聞通2丁目4番4号
<74>代理人 弁理士 渡辺勤
審査官 三輪学
<56>参考文献 実開 昭48-11997(JP、U) 実開 昭53-147994(JP、U)
<57>実用新案登録請求の範囲
(1) 角筒面に文字、数字、絵模様等を表示した5角筒柱を、その端面に設けた可回転にして角筒面が一致したところで停止するスナツプ機構で互いに結合するように構成した5角筒柱連結知育玩具。
(2) 上記のスナツプ結合機構は、凹側における角筒面の各々に対する位置に弾性片を有していて、この弾性片には、凹部あるいは凸部があり、端面の凸側においては角筒面の各々に対する位置に、端面の凹側の弾性片の凹部あるいは凸部に係合する凸部あるいは凹部が設けられている実用新案登録請求の範囲第1項記載の5角筒柱連結知育玩具。
詳細な説明
(産業上の分野)
本考案は、知育玩具の分野に属し、詳しくは、角筒柱を連結する形式の知育玩具に関するもので、その目的とするところは、5角筒柱の角筒面に表現された文字、数字、絵模様等を、5角筒柱を任意に組合わせ、又は分離し、さらには組合わせたものを回転させることにより、文字、数字を並べ変え、あるいは絵模様を合わせる等して、動作に変化を与え、幼児が興味をもつてこれらを習得させるにある。
(従来技術)
従来、幼児向けの知育玩具としては、昔ながらの約5cm角で厚さ1cm程度の板片に、焼印、シルクプリント等で絵又は文字を表示したもの、また立方体ブロツクに円形凸部と円形凹部とを設け、互いに連結すると共に、これに3角筒状ブロツク、中柱状ブロツク等を加えて連結し、例えば樹木等を形造るようにしたもの、さらには、立方体ブロツクの3面には正方形の凸面、他の3面には正方形の凹面を設けると共に、これらの面に文字、数字等を表示して凸面と凹面とで連結するようにしたもの等があつた。
(考案が解決しようとする問題点)
上記の従来のものの1番目のものにあつては、幼児が沢山の中から単に選び出して並べ、あるいは積び重ねるだけのものであり、2番目のものにあつては、選び出して組立てるという作動は入るものの、例えばひら仮名の各行を1つのブロツクの同じ周面に表すことはできず、また各面が一致したところで確実に停止するようになつておらず、3番目のものにあつては、各面を一致させて連結することはできるとしても、このものを2番目のものと同様に、例えばひら仮名の各行を1つのブロツクの同じ周面に表すことはできず、各ブロツクは連結のまま回転することができない。
(問題点を解決するための手段)
本考案は、これらの点に鑑みて考案されたもので、文字、数字、絵模様等を表現した5角筒柱を、その端面における凹凸のスナツプ機構によつて互いに結合すると共に可回転にして角筒面が一致したところで停止できるように構成することにより、従来の欠点を解消し、幼児をして興味をもつて文字、数字、絵模様等を習得できるようにしたものである。
(実施例)
以下、本考案の実施例をその図面について説明する。
5角筒柱Aは玩具としての機能は、中実であつてもよいが、材料費の節減、幼児による扱い上の危険等を考慮して中空とした方がよく、図示のものは、有底の中空筒1と蓋2とからなり、これらを固着して中空体としたものである.
そして、これらの中空体1及び蓋2は共にプラスチツク成形物であつて、中空体として形成された5角筒柱Aにおいては、底面及び蓋2は、いずれも端面と呼ばれるところである.
中空体1は、角筒面3、4、5、6、7の5角筒面と底面8とよりなり、角筒面は、例えば5cm角の正方形であり、底面8は正5角形である。
底面8には、外方に円盤状の凸状部9があり、この凸状部9の根元は、凹溝10となつていて係合周縁部11を形成し、この溝10中には、各角筒面3、4、5、6、7に対応した位置に、突起12がある。また中空筒1の開口部には段部13が形成されている。
蓋2は、中空筒1と同じ厚さの正5角形の板体14であつて、この板体14には中央部に、底面8の凸状部9が嵌合する大きさの円形状の凹陥部15が形成されており、この凹陥部15の周壁16には、5角形の各辺に対応する位置において、さらに辺縁方向に湾入部17が形成されている。
この湾入部17には、湾入壁18から内方に向かうU字形の弾性片19が空設されていて、この弾性片19の前面は、周壁16の面と一致しており、その前面には2つの突起20、20があつて、その間は凹部21となつている。このような構造を有する蓋2は、その板体14の周辺をもつて中空筒1の段部13に嵌合固着されて、中空の5角筒柱A〔第7図〕が形成される.
第4図に示す蓋2’は、第1図に示す蓋2の凹陥部15の周壁16に相当する部分に弾性をもたせて底板8の凸状部9の嵌合を容易にするために、突出壁16’を外周壁22から独立して設けたもので、U字形の弾性辺19’は、外周壁22から突設されていて、その前面は、突出壁16’の前面と一致し、弾性片19’の前面には、2つの突起20’、20’と、その間に凹部21’のあることは第1図に示す蓋2の場合と同様である.
中空筒1と蓋2〔あるいは蓋2’〕との固着によつて形成された5角筒柱Aの複数からなるものを結合するには、5角筒柱Aの底板8、すなわち、端面の凸状部9を、他の5角筒柱Aの蓋2〔あるいは蓋2’〕、すなわち端面の凹陥部15に嵌合するものであるが、この際凸状部9の係合周縁部11は、凹陥部15の周壁16にそつて押込まれて、弾性片19の弾性に抗して突起20、20を越えることにより、突起20、20が凹溝10内に落ち込んで係合する.係合された2つの5角筒柱A、Aは、結合部の凸状部9と凹陥部15とにて回転するものであるが、5角筒柱A、Aの互いの角筒面が一致したところで凹溝10内の突起12は、弾性片19の弾性に抗して突出20を乗越えて、突起20、20の間の凹部21に嵌入して停止し、5角筒柱A、A互いの角筒面が一致した長い5角筒柱ができ上がる。
(考案の効果)
以上説明したように、本考案の5角筒柱連結知育玩具は、各5角筒柱を適当に結合し、分離し、あるいは結合状態で回転して角筒面が互いに一致したところで確実に停止することができるように構成されているから、幼児が使用において、ばらばらの状態にある従来の積木の知育玩具に比して結合と回転という別個の動作を必要とするため、遊びのうちに興味をもつて文字、数字、絵模様等を習得することができる.
特に本考案は、5角筒柱であることより、角筒面に、例えば50音の“あ”行、“か”行等の各行の文字を表現することができ、1個で1行の5音、10個で清音45音、16個で濁音、半濁音、撥音を加えた71音、18個でさらに促音、拗音を加えた75音のひらがなの総てを表現することができるから、幼児は興味をもつて仮名文字を習得することができる.
また後片け等の場合には結合して1本の柱状とすることができるから、ばらばらになつて粉失する等のおそれがなく、知育玩具としては機能的で価値の高いものである.
図面の簡単な説明
第1図は本考案の知育玩具を構成する蓋の斜視図、第2図及び第3図は同上の有底中空筒の斜視図、第4図は第1図と異なる蓋の斜視図、第5図及び第6図は第2図及び第3図と同じ有底中空筒の斜視図、第7図は5角筒柱の断面図、第8図は2つの5角筒柱の連結状態を示す断面図、第9図は連結部の拡大断面図、第10図イ、ロは連結過程を示す部分断面図である.
A……5角筒柱、1……有底中空筒、2……蓋、3、4、5、6、7……角筒面、8……底面、9……凸状部、10……凹溝、12……突起、15……凹陥部、17……湾入部、19……弾性片、20……突起、21……凹部。
第1図
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第2図
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第3図
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第4図
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第5図
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第6図
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第7図
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第8図
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第9図
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第10図
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実用新案公報(二) <19>日本国特許庁(JP) <11>実用新案出願公告
<12>実用新案公報(Y2) 昭61-21117
<51>Int.Cl.4A 63 H 33/08 G 09 B 1/36 識別記号 庁内整理番号 2107-2C 6612-2C <24><44>公告 昭和61年(1986)6月24日
<54>考案の名称 角筒柱連結知育玩具
<21>実願 昭55-164077 <65>公開 昭57-87796
<22>出願 昭55(1980)11月15日 <43>昭57(1982)5月29日
<72>考案者 南澤巳代治 奈良市押熊町490
<71>出願人 南澤巳代治 奈良市押熊町490
審査官 三輪学
<56>参考文献 実開 昭53-147994(JP、U)
<57>実用新案登録請求の範囲
角表面2に文字、数字、絵柄等を表示したブロツク1の1つの面に筒面形の凸部5を設けその反対面に凹部6を設け、凸部5の円周面の複数個所に突起7を設け、凹部6の内周面に輪溝9と、凹部6の端面から輪溝9に達する縦溝8を突起7に対応する位置に、縦溝3と輪溝9とが連結するように設け、凹部6にはせのブロツク1の凸部
5を嵌合して相互のブロツクが凸部5を給として回動可能にしてなる角筒柱連結知育玩具。
考案の詳細な説明
従来、幼児同け知育玩具は、ブロツク、積木で単体の板、多面体のものが多くあるが、これら各表面に文字、数字、絵柄等が盛り込まれて単体だけの判断のみで終り他のブロツク、積木との関係りにも欠けていた。又、凸面と凹面を設けて込んで回転するが連結できず着脱が不充分であつた。本案は、これらの欠点をなくするために考えたものて、これを図面をおいながら説明する。
第1図は、2つのブロツク1を表わし端面にそれぞれ凸部5と凹部6を設け、凸部5円周面に突起7、凹部6内周面に縦溝8と輪溝9を設けて、表面2に文字3、絵柄4等を表示した斜視図、第2図aは、ブロツク1側面図で凸部5円周面上下に突起7を表示してある。6は、ブロツク12個が凹部6と凸部5によつて嵌合して連結した状態の正面図、破線は、連結部分の内部を表示してある。第3図は、第2図bの連結部面中央突起7よりの断面図で半分上の部分を表わしている。第4図は、第1図のブロツク1多数組み合わせた実施状態図、本案は、以上のような構成からなつている。尚、第5図から第7図は、突起7、及び縦溝8の数をさらに増した場合、これを設ける位置を各角筒柱について示たもので、このようすればよいことを、aは、凸部5面、bは、凹部6面で表示した側面図である。
本案は、従来のブロツク、積木遊びについて前述のような欠点を除くために考案されたもので、
第1図、第2図で示す如く、あるブロツク1の凸部5円周面の突起7が、他のブロツク1の凹部6内周面に突起7と対応して設けてある縦溝8にはめ込んで差し込み突起7は輪溝9に達してその輪溝9内を回動するのである。しかも、縦溝3の設けてある位置は、突起7の位置よりずらして設けている。即ち、突起7は、ブロツク1表面3の角端面線の中央の位置に当るあたりの円周面上下に設け、縦溝8は、凹部6内周とブロツク1端面の対角線との2交点の内周面の位置に設けてある。
これと同じく、各角筒柱についても、第5図から第7図の如く、突起7、縦溝3を、その数を増すならばこのような位置にすることが考えられる。
従つて、これにより知育玩具本案は、各ブロツク1による連結がスムースに、且、確実におこなわれて互のブロツク1の表面が一致したときは、その連結は離れることなく絵柄の形成、絵柄と文字、又は数字等によつて、その問題に合わせるよう形成させることができる.又、連結されている一方のブロツク1の端面の一辺が、他方のブロツク1の端面二辺からなる交点の角と直交したときは互のブロツク1を軽く引くと分離するようになつている.本案は多面体であるので1箇につき多くの問題に取り組むことができる.
従来の積木等であれば他のブロツク、積木とは関連性が少なく本案は前述の如くブロツク1の回動によりその関係を合わせ成立させるということで本案1箇で従来の積木板4~6箇分をこなすこともでき材料の節約として経済的にも効果があり多面であるため多くの問題が含まれているので、これを組み合わせるのに子供達に考えさせる、即ち、思考力、判断力を養うということから幅広く利用価値があり教育的にも効果のあるブロツク1といえる.
加えて、本案は、樹脂材で作られているが木材、金属材、紙材、ゴム材等でもよい.ブロツク1の形は、円、角筒柱であれば同じである.
尚、突起7と、縦溝8の位置は、第1図、第2図で示してあるが、この位置を逆にしてもよく効果は同じである.
図面の簡単な説明
第1図は、本案2つのブロツク1で凸部5と、凹部6を表示したそれぞれの斜視図、第2図aは、ブロツク1凸部5面側面図bは、各ブロツク1の連結状態の正面図、第3図は、ブロツク1の連結部分の上部断面図、第4図は、本案ブロツク1多数組み合わせた実施状態図、第5図から第7図は、4、5、6角筒柱それぞれの凸部5面と凹部6面を表示した各側面図.
1はブロツク、2は表面、3は文字(数字含む)、4は絵柄、5は凸部、6は凹部、7は突起、8は縦溝8、9は輪溝、10は凹凸接触面.
第1図
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第2図
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第3図
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第4図
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第5図
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第6図
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第7図
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別紙
被告販売状況一覧表
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公開実用新案公報
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公開実用新案公報
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実用新案公報
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実用新案公報
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